映画初心者のつぶやき

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#3『イット・カムズ・アット・ナイト(原題:It Comes At Night)』/極限下で顕れる人間の本性

 

になると恐怖を求めてしまうのは何故なんでしょうかね。お盆や終戦など、八月は死を意識することが多い月ですが、肝試しに興じたり心霊番組を心待ちにするのは、日が沈んでも漂う異様な熱気が、感覚を狂わせているからかもしれません。

 

て、お盆も終わりに近い昨日に鑑賞したのが「イット・カムズ・アット・ナイト(原題:It Comes at Night)です。2017年にアメリカで公開されたホラー映画で、翌年、日本でも公開されました。

gaga.ne.jp

 

の深くに住む両親(ポールサラ)と息子(ラヴィス)の三人一家は、何かの感染に怯えて暮らしていました。夜には厳重に戸締りをしてシートを張り巡らし、防護マスクも常備する徹底ぶり。家族を守るため、外にいる者は全て敵とみなす極限の生活を送っていたのです。

 

る夜、一家に男が侵入してきます。男の名はウィル。彼にも妻子があり、食料と水を交換する条件で、ウィル一家はポール一家と共に暮らすことになります。互いに心を開き始め、上手くいき始めた共同生活でしたが、ある夜半、外へ通じる赤いドアが開いていたことにより、誰かが感染したのではないかと疑い始めます。

 

小限の登場人物で、感染する得体の知れない何かに恐怖する心理を描いた本作。“それ”が目に見えないだけに、疑心暗鬼になる様子が絶妙に表現されています。ウィルの言葉の齟齬にポールがぴりついた場面は、野生的な警戒心が露わになっているようで緊張感があり、疑われた小さな息子アンドリューが「覚えてない」と震えながら言うシーンも印象的です。ポール役の方は「華麗なるギャツビー」でトム役をしていたジョエル・エドガートン、アンドリューを演じた子役は本作でスクリーンデビューを飾ったとのこと。凄まじい狂気の演技です。

ja.wikipedia.org

 

作の一般視聴者のレビューは総じて低~中評価。「ストーリーが単純」「意味が分からなかった」と内容の短さについての評価が目立っていたのですが、おそらく僕のような小説好きには好物の作品だと思います。小説はそもそも読み手の想像の余地が大きく、映画は完成された映像を受け身になって観るものです。背景の物語を想像するのが好きな方、僅かな時間を切り取り、多くを語らない作品が好きな方には非常に楽しめる作品かと思います。

 

「92分、あなたは正気を保てるか」「外には恐怖。中には狂気」と高らかに広告される本作。奇しくも感染性の病気が蔓延する2020年の今、家に閉じこもって恐怖し、疑いのある人間を憎しみ、排斥する様には、現実世界と一致する部分があります。追い詰められた人間の精神が崩壊していく様子を切り取った作品です。

(2017年/1時間31分)

 

イット・カムズ・アット・ナイト(字幕版)

イット・カムズ・アット・ナイト(字幕版)

  • 発売日: 2019/03/08
  • メディア: Prime Video